内澤 旬子 『身体のいいなり』
2012-04-17




世界屠畜紀行』を書いた内澤さんが、自分の乳癌の体験を赤裸々に書いたのが、この本です。
彼女は小さい頃から虚弱体質で、ガリガリに痩せていて、今でいうアトピー性皮膚炎もあったそうです。
高校の時に腰を痛め、大学生の時から腰痛に悩まされるようになります。
そして、38歳で乳がんと診断されます。

不思議なのは、彼女には普通の会社員よりも年収の高い編集者の配偶者がいるのに、いつもお金に困っていたというのです。
独立採算制を取っていたとはいえ、病気の時に配偶者がお金の面で援助していないし、してほしいとも言っていません。なんのための配偶者なのかと思います。
精神的な面でサポートをしていたとも思えないし・・・。
人様の夫婦関係ですから、本当のところはわかりませんが。

内澤さんは「癌患者の場合はできた部位とステージまで同じでない限り、なかなか話が合わないというのが現状だろう」と書いていますす。
それは癌患者だけではないと思います。どんな病気でも、同病者とは理解し合うのは難しいのです。
初期の人と中期の人とでは感じ方が変わりますし、後期の人とも変るでしょう。薬に対する耐性も人によって違います。精神面の強さによって病気の受け取り方が変わります。同病だからといってひとくくりにはできないのです。

病気になって一番辛いのは、自分の身体が自分の思いのままにならないことです。
手術する時なんて、他の人に自分の命を託すんですから、なおさら辛いです。
医師は患者のこういう気持ちをわかって欲しいと思います。
命に関する病気であろうが、なかろうが、患者は心細いのです。
そんな時に医師の心無い言葉に患者は簡単に傷つくのです。
それにしても内澤さんの出会った医師は最低です。
癌患者になるということは、精神的にとっても辛いと思います。病気になったことだけでも辛いのに、病気を診る医療者がとんでもない人であったら。
合う合わないで片付けられないことだと思います。
内澤さんの医師とのやり取りを読んでいると気分が悪くなりました。
それでも内澤さんはいいます。

「四度の手術で私が得たこと、それは人間は所詮肉の塊であるという感覚だろうか」
「独立した存在であるように思っていた精神も、所詮脳という身体機能の一部であって、身体の物理的な影響を逃れることはできない。私はそれをあまりにも無視して生きてきたんじゃないだろうか」

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[ノンフィクション]

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