中島京子 『やさしい猫』
2021-09-26


スリランカ人女性が名古屋市にある入管施設で収容中に亡くなったというニュースを知っていますか。
体調が悪いのを再三訴えていたのにもかかわらず、病院に連れて行ってもらえなかったようです。
どうしてそのようなことが起ったのでしょうか。

「日本における出入国管理や在留管理、外国人材の受け入れ、難民認定などの外国人関連の行政事務を併せて管轄する法務省の外局」が入国在留管理局だそうです。
前は入国管理局と言っていたところです。
そこで何が行われているのか、この本を読むと実態がわかります。

禺画像]

マヤは三歳で父親が亡くなったので、保育士をしている母のミユキさんと二人で暮らしていました。
東日本大震災があった年の五月に、ミユキさんは被災地の保育園にボランティアに行きました。
そこで出逢ったのがスリランカ人の八歳年下の自動車整備士、クマさんでした。
彼とはその時限りと思っていたのに、東京で警察官に職務質問をされているクマさんを偶然に見かけ、それからたびたび会うようになります。
しばらくしてからマヤにも紹介し、マヤもクマさんに懐くようになり、一緒に暮らし始めました。
なんだかんだと色々なことがありましたが、マヤが中学校三年生になった年の6月に結婚しようと言うことになります。
しかしクマさんが仕事を失ったことから、三人のささやかな幸せが崩れていきます。

クマさんがスリランカ人であったばかりに直面する様々な出来事を、誰かに優しく話すマヤですが、その内容は残酷なものです。
何度本を閉じようとしたことか…。

目を背けたくなる場面もありますが、非正規滞在外国人や技能実習生、日本語学校の留学生のこと、入管の問題、人権、家族とは…など様々なことを考えさせられる本です。
読みやすいので、亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんのことが少しでも気になった人や小学校高学年以上の若者に、是非読んでもらいたい本です。


追記:
アメリカ統治下の奄美大島のことも出てきますが、奄美大島だけではなく、小笠原諸島や沖縄も統治下に置かれており、1953年12月25日に日本に復帰しています。
クマさんの罹った病気は、たぶん原発性アルドステロン症です。

[日本文学]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット