豊田巧 『駅に泊まろう!』&『駅に泊まろう!コテージひらふの早春物語』
2021-08-21


読んで楽しい、旅の小説です。
行くところは北海道!
コロナ禍でどこにも行けない今、脳内旅行をしましょう!

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『駅に泊まろう!』
桜岡美月はやっちゃいました。居酒屋店長の仕事を辞めたのです。
それもわざわざ本社ビルまで行って、大成エリアマネージャーに辞表をたたきつけてやったのです。
入社してからの二年間、セクハラ、パワハラは言うまでもなく、長時間労働、過剰なノルマ、法令に抵触する営業行為の強要等に耐えてきました。
もう我慢がならなくなったちょうどその頃、徹三じいちゃんが亡くなり、遺言書の中に「比羅夫のコテージは、美月に継いで欲しい」と書いてあり、美月は決心したのです。
コテージのオーナーになることを。

東京駅から新幹線のグランクラスに乗り、終点の新函館北斗で乗り換え、長万部まで行き、小樽方面行き普通列車に乗り換えて八駅目の比羅夫がコテージのあるところです。
東京にいるとたいしたことがないように思えますが、北海道の広さをナメてはいけません。
東京のように頻繁に電車はないし、時間もかかるのです。
朝9時頃に出発し、函館北斗駅に13時34分に着き、比羅夫駅に着くのが18時過ぎですから。

実は私、美月と同じように比羅夫ってどこにあるのか知りませんでした。
羊蹄山の麓でニセコの近くなんですね。

比羅夫駅に着くと、駅の周りには何もなく、駅から徒歩0分というコテージはどこ?と思っていると…、怪しいガサガサいう音が聞こえて来ました。
熊か!と身構えると、なんとそれは従業員の東山亮でした。

駅のホームでバーベキューをしていると、予約なしのお客さんがやってきました。
彼は何やら訳アリ風で、気になる美月。
何故か次々に訳アリの客がやって来る「コテージ比羅夫」…。

『駅に泊まろう!コテージひらふの早春物語』
三月にもなると「コテージ比羅夫」に来るお客も減り、従業員たちは、と言っても二人しかいませんが、やっと正月休みを取ることができます。
コックの亮がいない四日間は美月が料理をしなければなりません。朝食はなんとかなっても、夕食が困ります。冬ですから、ホームでのバーベキューは出来ません。
美月は居酒屋に勤めていましたが、今時の居酒屋チェーン店はまな板や包丁なんかいりません。全て冷凍食品で、電子レンジで解凍すればできあがりですから。

そんな初日から事件は起こります。とは言ってもたいしたことないですけど、笑。
亮の兄で羊蹄山の山岳ガイドをしている健太郎から電話が来ます。
雪の影響で魚や肉類が入ってこないとのこと。
美月、ピンチ!野菜料理しか出せないのか…。
ところが健太郎からジビエ料理はどうかとの案が提出されます。

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[日本文学]

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